2023.08.01

薬膳にどんなイメージがありますか?
「中医学の考えに基づいた食事で、体調不良を改善できるらしい」「身体にはいいみたいだけど、でもなんとなく難しくて面倒」という印象を持つ人が多いのではないでしょうか。
食事としては「身体にいいこと優先で、美味しくない」「独特な材料が必要」と、ネガティブに捉えている人もいるかもしれません。

一方で健康や美容に高い関心が集まっている今、なるべくシンプルでナチュラルな素材で美しくヘルシーに毎日を過ごしたいという人も増えています。

薬膳は美しく健やかな生活を過ごすサポートになるの?
謎だらけで怪しい気もするけど、実際、どんなものなの?

実は薬膳の本当の効果はあまり知られていません。
薬膳を生活に取り入れて活かす方法を調査しました。

薬膳とは?

薬膳とは?というと、まず「中医学が」といった概念について語られます。
普段、あまり接することのない単語が並ぶ中医学の話はとっつきにくく、自分との結びつきを感じることはなかなか難しいですよね。
体質の傾向や身体の悩みを解決するためにはこの食材を摂るといい、というような実践的な知識は役立ちますが、それが薬膳なのでしょうか?

それは2つとも薬膳の本質ではありません。
薬膳でいちばん大切なことは未病です。
「体調を崩す前に養生する習慣が、健康で幸せな人生をもたらす」というのが根幹にあります。
病気になってからというより、ならないようにするにはどうすればいいか。

食事の用意をするとき、未病という観点を取り入れたものが薬膳です。

薬膳は、ちょっと「先取り」の心がけ

体調はいつも季節や生活習慣などの外からやってくる要因に影響を受けます。

たとえば春先は、乾燥により肺に溜まった余分な熱が咳や痰を引き起こすことが多いので、風邪の症状が出やすい傾向にあります。
さらに肺が高ぶると、吹き出物が出たり、精神的に落ち込んだり、不眠になったりすることもあります。
薬膳を実践している人の多くは、そういった症状に対抗する献立やレシピを作っていると思います。
でも本当はもう「夏の準備」をする時期です。
その時になってから、症状が出てから対抗するのでは遅いです。
夏は夏で身体は暑さと戦い、すごく忙しい。
その対応に追われていると秋が来るころ、体調を崩すこともあります。
夏は「秋の準備」が必要です。

そのように「ちょっと先の準備」をずっと続けるのが、薬膳の本来の姿です。
「表に見えている症状を解決するための薬膳」にスポットライトが当たっていますが、それには違和感があります。

季節はめぐる

季節は移り変わります。
春から夏。
夏の終わりには秋の始まりがあって、秋から冬、そしてまた春。
境界の時期は次の季節と色が混じり合い、グラデーションになっているはずです。
季節は一気に変化する時もあれば、戻ってしまうこともあって、気温のジェットコースターに乗っているような時もあります。

四季の移り変わりが身体に与える影響もまた、繰り返し繰り返し訪れます。
「肝」は春、「心」は夏、「脾」は長夏、「肺」は秋、「腎」は冬に養生すべきところという指標ですが、この移り変わりもまたグラデーションになっています。

このめぐり続けるループの”今”でなくて、少し先を見て体調を整える。
それが薬膳のきほんです。

めぐる日々の中で続けること

西洋医学の処方に慣れているせいか、薬膳にも「この症状にはこの食材を食べれば効果的」というピンポイントの回答を求めがちです。
そして症状が治れば、それで終わりといった感覚が強くあります。

薬膳とは、一年を通して食べていくもので、めぐっていくもの。

暮らしの中で、なんとなく続けていくことが、やっぱり大事です。
毎日、薬膳のことを考えたメニューを作る必要はありません。
無理なくやれる範囲で、未病を意識した食事を整えてみると、いまの自分とちょっと先の自分の身体が見えてきます。

「昨日、薬膳レストランに行ったから、身体が綺麗になった気がするし、調子がいい」というのも楽しいです。
でもそうやって薬膳が1回きりの使い捨てのようなものになるのは残念です。
薬膳の養生法は「冷えには体を温める食材」「むくみには水分を出しやすくする食事」といったように一律ではありません。
ある意味、オーダーメイドの養生法と言えます。
本当に必要な食材は自分しか分からないのかもしれません。

毎日繰り返す「美味しい食事を楽しく食べる」を、次の季節の準備という観点から見直すのが薬膳です。
病気になる前の予防が「美味しい食事」だったら嬉しいですよね。

(取材・文:早川麻里)

この記事の監修者

田口 三江子

田口 三江子

薬膳指導士

  • プライマルヘルスコーチ
  • 衣食住養生アドバイザー
  • NPO 呼吸大学代表
1994年より江戸懐石近茶流、1999年より薬膳を学び、数々の飲食店のプロデュース、メニュー開発、立て直しなどに携わる。2005年「日本人の根っこを元気にする食」をコンセプトに、本格日本料理店「割烹うさの」(表参道)を開店。
複数企業のアドバイザーを勤めながら地球を汚さない農業の普及、生産者の支援活動の他、各種講座などでアブラの大切さや料理の基本、味付けのコツ、プロも知らない素材の見分け方、運氣やエネルギーの高まる料理法や出し方、食べ方を伝えている。

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